プレシーズンは作戦を練ろう 50MHz F9FT 5エレをシミュレートする JH0ISW 皆川義文 1994年のSADO移動でJR0BAQ西山さんが提供し活躍した、小型軽量で移動 に最適なF9FTをシミュレートしてみました。 シミュレーションソフトは、かの有名な YagiOptimizer Ver.6.02 を使用 しました。 このアンテナはブーム長が4m以下と小さいのにC社の昔の6エレと同等、もしくは それ以上の性能を発揮しています。 図1 図1がメイン画面です。 3つの周波数でのビームパターンが表示され、パターン内の数値は上から、周波数、 フロントゲイン、フロント・リアローブ比(F/B比に設定可能)、給電点インピーダ ンス、SWRが示されています。 図2、3は、自由空間における水平面と垂直面のパターンです。 図2 図3 次ページ図4に、ゲイン、SWR、F/B比、インピーダンス特性を示します。 FMやRTTYの周波数帯ではSWRの悪化が見られます。これは設計思想がSSB /CWによるDXQSOを主眼に置いているためと思われます。 ゲインピークをもう少し上に持ってきて、SWRを51MHz位まで使えるようにし てみるのも良いかもしれません。時間の都合上このシミュレートは、次回へ持ち越した いと思います。 図4 図4はフロント・ゲイン、SWR特性、フロント・リア比、給電点インピーダンスの グラフです。 SWRが 50.000MHz でマッチングをとってありますが、これはYOが自動で行い、 完全にマッチングが取れたもの、としてあります。 任意の周波数をとることもできますし、手入力でヘアピンマッチ、ガンママッチ、T マッチの計算もできます。 図5,6,7,8は地上高別による、垂直面のビームパターンです。地上高6mから 18mまで、3m刻みで見てみました。 図の0dB=のゲインは、大地反射が完全に効いている時の数値です。大地反射利得 は最大で、水平偏波で6dB,垂直偏波では3dBと言われています。 図5 図6 図7 図8 図5、地上高6mではブロードなメインローブが15°に出ていて、国内Eスポに適 したパターンが出ています。 図8の18mHに設置すると、メインローブがだいぶ寝て5°になり、グランドウ ェーブでのQSOのチャンスが多くなることがわかります。また、サブローブが増えて Eスポにも対応できそうです。ただ、メインローブの打ち上げ角が低いので、大陸から のバズも同時に受信してしまい、混信が増えてしまう可能性もありそうです。それと、 ローブがシャープなので、到来電波がうまくローブのある角度で入れば良いのですが、 そうでない場合、極端に信号が弱くなってしまうかもしれません。 移動運用では、たとえF9FTといえども一般に最高でも10mH程度が限界でしょ う。本格的にアンテナを設置して、グランドウェーブを延ばしてQSOしようとすると きは、見晴らしの良い山の上などを除き、スタックにした方がようでしょう。 ブームの長いアンテナよりも小型アンテナのスタックの方が、設置を楽に行なえると 思います。小型八木ですので、間隔は3mあれば十分です。 スタックによって、上方へのビームパターンが抑えられて宇宙ノイズが軽減され、S /N比の良いアンテナになると思われます。 例として、上のアンテナを9m、下のアンテナを6mに設置した場合、打ち上げ角は 11°でシングルの9mHのそれと比べ打ち上げ角は若干高くなりますが、ゲインは 2.8dB増えて、第2ローブが−8dB、第3が−28dB後方へは−30dBくら いになりました。 下のアンテナを下げて間隔を4.5mの場合、上方へのローブが大きくなり、あまり 良いとは言えませんでした。 上下スタックでは水平面のビームパターンの変化はありませんので、ビーム合わせが 楽です。 スタックにしたら耳がよくなったが、飛びがいまいちだ、というのを聞いた事があり ますが、ゲイン以上にS/N比が改善されたためと思われます。 これはら固定運用にもいえる事です。 参考文献や同じ八木アンテナのシミュレートソフトのYAGIMAX(Ver.3.38) で、スタックでのビームパターンを見ると上記の事が言えます。 スタックの地上でのパターン図をお見せできれば良いのですが、YO上ではできませ んでした。YAGIMAXでは表示できるのですが、セッティングが悪いのかプリント アウトできませんでしたので残念ながら紹介できません。 以上のことの念頭において、春からのシーズンを6mで楽しんでみませんか。 参考文献 VHF帯の伝搬とFAI(JE1BMJ) 月刊「59」 1996 1月号