オフシーズンも作戦を練ろう!
50MHzのアンテナをシミュレートするU

                                   JH0ISW 皆川義文


AOを入手
 前号では、F9FTシングルのシミュレーションをしました。
 その後、Antenna Optimizer(AO)を購入しましたので、YOでできなかった地上に設置した
スタックアンテナのシミュレーションをAOでやってみました。  マニュアルは英語で、それを
読んで理解してから取り組んでは、いつになるかわからないので、とりあえず動かして操作
して、アンテナの定義もサンプルのデータを見よう見まねでやりました。ですので、機能を
生かしきれていなかったり、間違いもあるかもしれませんが、ご容赦願います。

5エレ八木スタック
 移動運用で多くの局とQSOするため、アンテナシミュレーションを
利用して、どのようなアンテナが良いのか考えてみました。  参考までに、シングル八木の
様子を図1、ビームの打ち上げ角を図2に示します。
 第2、3サイドローブも大きくかなり近距離のEスポでもQSO可能なパターンになっています。
 それでは早速スタックに組み替えましょう。地上高、上が9m下が6mで間隔は3mです。
案の定、上方へのローブは少なくなりました。  しかし、下段のアンテナの影響か、メイン
ローブの打ち上げ角が上がってしまいました。
 これでは、どちらのアンテナでも大差無いように感じてしまいます。ゲインも2dBも上がって
いません。  ただ、上方へのローブが押さえられているので、宇宙ノイズの高いところが上方
にある場合は、シングルに比べS/N比が良くなると思います。 巻町のJA0JPD有坂さんが、
ほぼ同じ特性のアンテナを製作され、シングルで三島郡から、スタックで岩船郡粟島から
QRVされましたが、機会があれば性能差を伺いたいところです。


図1 5エレF9FT単体


図2 5エレF9FT単体 打ち上げ角パターン


図3 スタック間隔3m


図4 スタック間隔3m 打ち上げパターン


図5 5エレ3mスタック3Dパターン


 とかくスタック間隔は広く取りたくなるのが人情です。  では、その場合どうなるでしょうか。
図6が間隔4.5mでのパターンです。  前方へはメインローブのみとなり、それが目立
ちますが、真上へのローブが目立ってきました。F/B比も悪化しています。またゲインの
変化も、ほぼありません。

図6 スタック間隔4.5m 打ち上げパターン


 50MHzでは宇宙雑音が多いので、できれば不要なローブは無い方が良いです。
 この場合、一概にどちらが良いかは言えませんが、EスポやMSの発生も考慮に入れる
と、3m間隔が良いように思います。
 これが固定局でDXをねらうとなると、アンテナの地上高も変わってきますので、評価も
違う物になるでしょう。(参考文献参照)


6エレ八木
 その後、10年以上昔のCL6DXX(7エレ)を利用して、YOでSSB帯での
運用に絞り、6エレ八木を高ゲインに設計しました。
 結果、自由空間でのゲインは約9.5dBとなりました。と言う事は、先の5エレの3dB
アップと言う事になります。ブーム長も約3dBアップ(2倍)の7.2mです。
 さてAOでシミュレーションです。
 お見事、9mHで5エレスタックより、ほぼ1dBゲインが有り、打ち上げ角も下がってい
ます。これは、単体で高さが9mを稼いでいるためと思われます。

図7 6エレ八木9mH


図8 6エレ八木9mH 打ち上げパターン



5エレ×2 VS 6エレ八木
 移動運用では、アンテナを早く設置して多くのQSOをした
いところ。スタックケーブルと、2本のアンテナの設置を考えると、6エレに軍配が上がり
そうです。
 しかし、5エレ×2にも良いところがあります。それは、回転半径が小さいために、樹木
が茂っていても、6エレよりはるかに取り回しが良くなります。  また、水平面のビーム
パターンがブロードなので、ビーム合わせに6エレほど気を使わなくてすみます。
 山の上では、もっとビームパターンが変わってくるでしょうから、実際の運用を考えると、
ここでのシミュレーションだけで、軍配をあげられません。  近いうちに、この6エレを移動
用に作り、JA0JPD's 5エレスタックと性能比べをしたいものです。(5エレ単体でのF/B
比はとても良い特性です)


                      参考文献 ・VHF帯の伝搬とFAI(JE1BMJ)
                             ・月刊「59」 1996 1月号