|
ナイトキャンプの巻。 9月30日土曜、雨、午後8時半出発する。久しぶりに3頭プラス・ワンの揃い踏みで、シーズン3度目「宝探し」のためのナイトキャンプへ。奥地には縄文時代の住居跡が何箇所も発掘されている。日本海から東へ約30Km内陸に進んだ今回の行き先は新潟県最北と山形県最南端の県境だ。その朝日スーパー林道ところになぜそのコロニーがあるのか、あったのか。冬季は雪が想像できない位降り積もり、6月にならないと開通しない。この辺一体は無人だ。今でこそ道は造られているものの、当時はそのコロニーの生活基盤となった三面川の源流近く、たぶん河口からこの川を遡ってコロニーを築いたのだろうが。先人の中にも未知の約束の地に、ロマンを感じてた者が居たのかも知れない。 現地午後11時過ぎ着。ロシナンテのライトに浮かび上がるその外側は真っ暗闇だ。その内側と外側のあたり、シロっぽくシルエットになってるブナの大木は、昔小さい頃読んでもらった絵本の中に出てくるような、枝振りが盛り上がり、あのキツイ目がついて、よく旅人をたぶらかす樹を思い出すが題名はわからない。 小雨が降っていたので、キャンパーも居ない。物好き一風 雲ご一行(犬3頭)だけ。思わずナイスと声をあげそうになる!目的は早朝から猿田沢という沢を渡った左岸のフィールド、きのこの探索。この辺は国内第3位のブナの森(面積)だと聞いている。第1位秋田・青森の白神山地、第2位長野県秋山郷奥そして…ここ。右岸は森林育成の林道、その左岸は道が無く、悠久のブナなどの落ち葉が積もり積もっての柔らかな腐葉土である。気持ちよく生息いや繁茂する藪笹を分けて歩く、太古からの道無き山懐だ。 飯豊(いいで)・朝日連峰(国定公園)の一角。 その沢べりでのナイトキャンプ。犬たちはフリーにし、遅い晩飯一人で雨の中酒盛り。昔は、やれテントだ何だかんだやったが、最近は面倒で車中泊。ただ焚き火だけはする。暗い中、薪を探すのは困難なので、既に用意し、持参。火床はドヤ街でヒントを得た一斗カン。スグレモノだ。肴はブナの樹冠から覗く月と星があれば、と期待してたが雨中の一人夜宴。 かわりに焚き火の炎と好物国産バタピーナッツとソーセージ、エチゴビール2本・銀河高原1本の缶ビールそしてサントリー角ビンだけ。たいした物だ。 車中で聴いていたCDをそのまま流そうかと、 こうゆう時いつもその誘惑に駆られるが、近所の小動物の安眠を妨げない気持ちのいい選択をする、さすがの一風 雲。大体夜行性であることは考えないことにする。いい気分を勝手に盛り上げる手法である。半径20Km以内多分誰も人が居ないこの場所は、葉っぱに当たる雨の音と焚き火の爆ぜる音だけでも結構肴になることに昔から気づいていた。一斗缶から立ち上がる炎は、それを中心に半球型の炎の光の環を造る。しかしこれは漫画の描写だ。 小雨の中でも燃え盛る朱の明かりは、オレの宇宙で、周りを囲むブナなどの樹々の葉っぱを薄ぼんやりと照らし出す。ブナの森の中に居る。Teepeeはオレの椅子の周りを、おこぼれ頂戴という感じでウロウロ。ベスたちは狭いところから開放され、森の中をガサガサと既に宝捜し。オレの宇宙の外、藪の中を走り回る音だけ聞こえる。時折自慢したそうに、ずぶぬれになった身体をオレの前で振る。オレの肴を羨ましそうに見て、もらえないことが分かると、また宝捜しにいそいそと飛び立つ。 まだ寒くないせいか、ポトポト帽子や葉っぱに当たる雨音、薪の爆ぜる音、 月も星も見えない中、それでもかなり快適なひと時である。ただし椅子が集めた雨は、だんだんパンツにまでしみてくる。不快未満であったが、いつもの選択。自然の中では、それを差し引いてもいい気分だ。無言でいるだけに時折犬に声をかけて、オレの声帯の異常を確認することも忘れていない。ホロ酔いで12時半頃車中に、寝袋に入って寝た…。車窓を少し開けて…。 「ゥン〜〜ン」と眠ってから甲高い薮蚊の襲撃音。 もらった台湾お土産の常備薬タイガーパーム軟膏を取り出し、髪やうなじに塗り撃退予定で再度ぐっすり。軟膏独特のオジン臭さとナイス中年、どっちを選ぶか?そう、現実には勝てないのである。しかし朝、目が醒めたら塗り忘れた両手の甲は20個所近く刺されていた。 時期遅れの蚊を「哀れ蚊」という風流な季語があるらしいが、これだけ刺されるとそんなことは言ってられないな。まぁ自然と溶け合う為のリスクのひとつ。
朝は薄暗い5時からストーブで沢の水を煮て(?!)熱いコーヒーとソーセージとバケットそして気付けにウイスキー少し多めにコーヒーに垂らす。 明け方の森の寂ばく。 聞こえる音は…犬達の催促と合間に聞こえるヤッパリ葉っぱを打つ雨の音。「静けさや、葉っぱに当たる雨の音」馬骨童子どこかで聞いた戯れ句。 なんのことはないオレが創った。Teepee達にもフードやり万全の体制。雨が昨晩より小降りになっていたが人の気配はなく、林道を走る車の音も聞こえない絶好の日だ。 午前6時出発、薄暗く小雨をものともせず…目の前の冷たい沢にワシワシ入って対岸へ。 沢底はスパイクが効いて滑らない。水があまり得意でないベスもかろうじて渡る。結果は…きのこもまだ早く、食えないきのこはあったが、犬たちとブナの森をあっちこっち彷徨いながらの宝捜し。見つけてもらいたがってるきのこは何処にも無い。隠れてる美味なるきのこも見えない、はず。探すと無いのがキノコかもしれない。 うっそうとしたブナの森、途中数本のミズナラではマイタケもなし! レインウエアを着ていてもぐっしょり感がある、首筋から伝って入る雨、中からは汗でびっしょりである。森の中は柔らかな起伏があったり、大きな倒木が行き手をふさいだり、小枝の根元に捉まりながら上がったり下がったり、小さな湿地帯があったり、何度来てもいつも違う変化を見せてくれる。背の高さを越える笹の藪などは往生する。 Teepee達はオレの少し踏みつけた後を要領よくついて来る。きのこは発見できなくとも、こうやって歩く、鼻腔を膨らませ小刻みに呼吸をし、森の中のフィトンシッドを独り占めである。 ブナの森のにおいは清潔な腐葉土の香りか。 シトラスのトップノートをもっと原始的に、そして洗練されて無い香りだ。しかし犬より鼻の利かない宝探しは容易でない。 天上の小雨はブナの樹冠で霧となって、森の中を漂う。雨には変わりない。 大きな沢をワシワシと渡ってこのブナの森に入るので、帰りの沢の増水が気になり、3時間だけしか騒げなかった。案の定水かさが増しており、腰まで急流に身を任せながら犬たちと斜め下流に横断成功。忍耐と決断が物を云う。 Teepee達は足が届かないから泳ぐというより流されながらあがいてるという結果的泳ぎ方である。お陰でパンツまでびっしょり、着替えを持って来ているので安心である。ここの岩魚の餌にならずに済んだことに感謝。 かってこの沢の一つ峰を越えた同系の、ゴルジュと云って切り立った岩が並ぶ廊下状の青々とした淵で、37Cmの岩魚を突いた事がある。足場悪く、釣り人が入渓出来ない処、潜ったら一瞬目を疑った。巨大鮭が宇宙遊泳といった観。たいがい上から見る物だが、この時は深く潜っていたから斜め下から見た。侵入者に気づいた岩魚は身を翻し巣穴に隠れた。一息ついてズドン、不味かろうはずはない。 駐車場には人影も無く、濡れそぼったヒトと犬たち。 何もかも肌にべっとり張り付いた装備をはずす。両の足はハンティングブーツの中で水攻めにあっており、一刻も早く抜け出したがっていたが、今日の無事を喜びウイスキーを一口褒美に上げた。
|
|