■オフ、魔性の渓谷■

2003年5月24日(土)〜25日(日)

参加者:mac3・その助手・soneta・魚菜・一風 雲&teepee

ロケーション:長野・新潟県境ブナの森  to Headline(戻ります)

なぜ?魔性の渓谷って

東海のラベンダーさんから下記小説の写真借用しました。

それは長いこと読み継がれ、ページの中身も外も手垢でセピア色。

角が磨り減った厚手の紙で装丁された一冊の本。物心ついた頃、

最初に出会う活字は絵本である。

もちろん母親とか兄弟姉妹からの読み語りであろう。総じて自らの意思で読もうとした最初に出会う本。

小学校の図書館にあった。そこはインクの匂いに混じるかび臭さ漂う中、忘れもしないそれは「十五少年漂流記」であった。

爾来、それは原体験となって今をも我を占める。

■はじめに、読みながら番号をクリックすると該当する写真を見ることが出来ます。参加者の写真も借用してます。

  すでにsonetaは駅の玄関に座り込んで待っている。早い!メールでは最後に降りるといっていたのだが。

「痩せたでしょう?!」・・・確認しようにも外見からではあまり判らなかった。この春に東京で下町を案内してもらって、彼の企業戦士ぶりの一端を垣間見ている。そのせいかもしれない。即答の無いオレに愁嘆したのがわかる。いずれしても魔性の渓谷でそれはわかるだろう。 午前9時には関越高速道にロシナンテは載る。視界を下に移すと田植えの終わって光る蒲原平野が長く続く。車中sonetaと大まかな打ち合わせ。大体コレですむ。詳細は行き当たりばったり。我等は東海軍mac3その助手・花山魚菜と合流すべくK村役場を目指す。定時連絡が12時、その後位置確認して落ち合う時間を決定する。

そのまえに時間があるので今晩の菜を採ろうと、sonetaにとっては昨年来の秋山郷へと小手はじめに向かう。イラクサ、東北では山菜の女王とも形容されてはいるが、こちらでは見向きされない山菜である。ここ一ヶ月、毎週この地へ来ているオレにはやはり1週間の緑の一木一草の充実振りには驚かせられる。こんな中でも我等はグローブを装着して柔らかで痛い棘のあるイラクサを摘む。小さなタモギ(コシアブラ)、ワサビ@、みずな(ウワバミソウ)、ウドなど十分すぎるくらい山菜を摘んでいる頃12時になる。

定時連絡である。携帯の電波が届く麓まで降り、mac3に電話する。「朝遅かったから、今ウド畑でウドを採っていますよ〜」、スキー場でウド採り。そう越後の山々はが時には山菜畑のような錯覚を教えてくれる。 「午後2時にK村役場にて合流しましょう」「合点!」この一帯にはイロイロ温泉もあるのだがsonetaは珍しく関心を示さなかった。もっとも今入っても夜の温泉体験の感慨が薄まるのだろうと、とりあえずランチを食いに国道に向かう。 役場はここから程遠くない、と、レストランのある物産展にはいる。軒先は土産向け山菜が各種並んで客を待っている。これから我等が採ろうとする山菜の市場価格を眺めるにとどめる。もちろん明日からの採取で優越感を味わうために。sonetaもきっとそうだったに違いない。軽いランチをsonetaはオーダー。オレは重いランチをオーダーして十分兵糧を腹に蓄える。先はわからない。対処だ。 しかしカロリーを消化しなくてはと今日参加する皆ほどまったく考えない。それにしても選りによってmac3・助手・魚菜・soneta等はセルフコントロールまたはマインドセットの得意な輩ばかりで、この対極のオレは食後のあるいは休息の一服さえも少し胸が痛む、が決してタバコのせいではない。幸い禁煙助言も発せられないので窓を開けてsonetaの燻製ができないよう配慮し役場に向かう。

14時ジャスト、東海軍団のドラエモン号が飛び込んでくる。颯爽とした精悍そうな男女各一人と幾分重そうな輩が一人。満面の笑みで降りてくる。再会を喜び握手を交わす。魚菜とmac3はビフォー・アフターのいい例かもしれない。魚菜は禁煙リバウンドでの体重増加を誇らしげに語るが、そのメガネの奥の目は悲壮感が漂っている。突き出したお腹をsonetaが臨月の妻のそれをなでるように確かめる。内心、勝利感に浸っていたであろう。

今回オフ会の目的が簡単明瞭であるからして、雑駁な打ち合わせをその駐車場で済まし、足らない必要品を買い求めて一気に今夜の野営地を目指す。標高1500mにあるオープン前のキャンプ地。高度が上がるにつれ、まだ芽吹きの無いブナやシラカバの森を抜ける・・・と、突然現れる高地平原である。天気が良く昨年の雨の修羅場での舞台設定とは雲泥である。ある大きなカエデかもしれないが具合のいいスペースがある。ここAを今夜の野営地に異見は無い。

すぐさまに思い思いの行動である。東海軍は早くも広げたテーブルにこの日の午前の収穫Bを並べる。彼らは昨晩妙高のとあるホテルに泊まって、今朝は遅くから雪の解けたスキー場で山菜を採っている。太過ぎるオオナルコユリから始まって山菜のオールスターレビュー。講釈も聞かなければ自然界の仁義に欠ける。春の長い日中はゆとりがある。講釈し終えると素早いmac3はすでにタープを魚菜と設営し始める。まったく無駄のない輩である。

タープはロシナンテとドラエモン号との近くに張るC。助手はテンプラの用意に余念が無い。オレは・・・さしずめ焚き火である。汲めなかった水と予備の焚き火調達をsoneta・魚菜に依頼。その間に今夜の食事の心配をする。スキヤキの予定を急遽・・・美味そうで珍しい焼肉材料があったので変更をかけていた。東海地方におけるスキヤキの段取りを見たかったのであるが、その準備をしてきた助手にゴメンちゃい!

焚き火も揺らめきはじめ、夕食前にteepeeと近くを偵察に出かける。敵はいないかどうかである。薄暮の高原、黒い残雪を越えて森に分け入る。残雪の際には出たばかりの薄黄色のフキノトウの群生、上を見上げれば小さなタラノメ・タモギ(コシアブラ)などシーズン前の優越感をひっそりと味わう。唐松の落ち葉は厚く堆積し、その上の枯れ枝が踏まれて静寂の中、不釣合いな大きな音を立てる。

暑くも無く寒くも無く、鼻腔を広げ深呼吸しながら筋肉をほぐす。タープのある野営地Dも小さく見え、その焚き火の煙は・・・やはり青くたなびいている。いくつかの早すぎる山菜を摘み、ヒトが歩かないだろうと想定される森の中をteepeeと歩き、野営地に戻る。冷たいbeerが待っている。遠く見渡せる台地に独立した樹木の数々、まさに自然の配列であろう。ところどころグラウンドカバー状態で薄青紫の野草がコロニーを造っている。到着時、最初に撮りだしたものか、野営地を設定してから撮ったものか今は覚えが無い。しかし順序はともかく思い思いその風光を撮る。日も傾き始め、夕日を浴びシルエットを伸ばした独立した樹木。寝床に準備に余念のない小鳥達の度を越したさえずり。焚き火の煙の匂い。その他毛穴がヒトツヒトツ感じるすべてが遠く日常とかけ離れ、精神さえ昇華しつつあるこの瞬間がナニにも換え難いものであることは参加している皆は感じているE

精悍mac3Fは新たな企画のタモをサウンドペーパーをかけ始める。「ココへきてコレをやりたかったんダァ」、判る判る。食う前に魚菜は一人用テントを道隔てた造成途中のグラウンドの脇にテントを張る。平じゃないと眠れないと極めて人間的なことを言い、そくさく移動する。sonetaはタープの中の端にテントを張る。軟弱虚弱を自称するsonetaは普通のアルミマットを2枚敷いて寝る。寒さ対策であるとの事。角ばった大柄mac3と助手は今回もドラエモン号に眠るという。オレもロシナンテのセカンド・サードシートを長く倒して寝床とする・・・が、まだ早い。陽落ちる前に夕食の準備にかかる。思い思い買い求めた食糧をbeerや飲み物で食べるながら。アッツアッツな極上てんぷらが、山菜取りを体験した者に限られた極限の味わいを教えてくれる。昨年失敗した闇汁のバージョンアップ作成にとりかかる。ヨブスマ・みずな・うど・イラクサ・ふきをザクザクに切ってオリーブオイルで炒める。シンナリして水を入れて20分ほど。アクを採り、サバの水煮缶を二つ空ける。味噌で調整して出来上がりG。ことのほかコレが美味くいくのである。名づけてドサ草鍋である。それにmac3が持ってきた昨秋のキノコを入れたり、想像しにくい味だが山菜とキノコのコラボ鍋の誕生の瞬間でもある。事実、魚菜Hは4杯も呑んだと言うし、翌朝こんどはsoneta持参のキノコを入れてまた皆で呑んだがヤムヤムしていた。それにしても新幹線で来たsonetaが昨秋のキノコをリュックに詰める昨晩の彼の思い入れと姿を想像しココロが愉快になる。

腹に温かなものが行き渡り、そろそろ次なるメニューは・・・温泉が定番。一番近くにM温泉がある。関東近県では露天風呂部門堂々大関の評価である。そわそわsonetaを見かねたmac3が「行こうか」ってレスキューを掛ける。ウキウキsonetaは早速準備をする。オレは薄暮の中にいたかった。魚菜Iも残るという。二人で火の番を申し出る。そう、意外とmac3は義侠心に厚く、しかしそぶりを見せないことに美学を持っている。昨秋に白川郷奥のブナの森を散策した時の、ブナの森が初めての奈々子をエスコートしたあの心配りを参加した者は感じているはずである。しかしダレも口に出さず、せいぜいココロに記録しているだけである。サンQ、mac3!3人は下界に向かう。残されたオレと魚菜はシートに寝そべって焚き火を厳重監視する。ともにエッチ系をも自認する素直な二人である。艶遊伝などトツトツと語りだす。揺らめく炎は饒舌にする。決して新しい発見はないのである。ノーベル賞性科学賞くらいあってしかるべきだろう。世界は広いのだ。しかしむしろ普通なんだということが判る内容であったが、この詳細については語るべくもない。枚挙に暇が無くて・・・

魚菜のいうとおりこの台地にジンワリと冷えが押し寄せてくる。真冬の装備でなんとか火を見て凌いでいる頃、台地の静寂のなかで焚き火の爆ぜる音をかき消すような不似合いな音を轟かせ連中が帰宅してくる。開口一番「たいしてイイ温泉じゃなかったぞぉ〜。ヌルヌルも無いし!」、まぁ個性がない温泉は入らないmac3らしい感想である。こういう場合は口に美味いものを入れるとケロっと忘れるのが人間である。焚き火の上の網にスネ肉を拡げる。音を立てて肉Jは瞬く間に焼ける。最初は塩とレモンでソレを喰う。あらかた平らげた頃、タレ付を焼く。少し醤油が多すぎたがシンプルな食感はやはり皆の初体験の部位であった。スネ肉の中のその中にある紡錘形をした筋肉である。いわば賄食用で、魚でも肉でもこれらを専業とする人たちしか味わえない食べ物が存在するいい見本であろう。最後のとどめは「豚のホルモン焼き」である。これにも箸が数本網の上でバトルした。準備してきたあわせて1.8kgの肉類は5人があっという間に平らげたのである。夜食バトルも終わり、我等は焚き火の周りを囲んでいる。濃いコーヒーがあればひと月ほどココに居座ってもいいと思った。だが無くて幸い、こうして雑文をしたためていられる。明日の簡単な予定を話し、早い就寝となる。ねぐらにteepeeと潜る。ロシネナンテの天蓋を開ける。焚き火で見えにくかった星屑が天蓋から雪崩落ちこん来る。オフでないとこんなに早く就寝できない。いい寝按配を探すteepeeの立てる物音もそのうち・・・星屑に埋もれて瞼が落ちた。

午後10時に眠っていた。途中カッコウの鳴き声が一番鳥であった。それを確認後二度寝して目を醒ましたらK・・・午前4時である。薄明、あくまで薄暮との対比であろうが字句の存在は調べたことがない。その薄明の高原台地に降り立ち、深呼吸をする。相変わらずむせてしまう。風と光、風光はオレの網膜に映し、鼻腔の嗅覚細胞をくすぐり、毛穴の一個一個に沁みいってくる。日の出でわかる東は朝焼けである。台地を渡る匂いは湿って冷たい大気。鳥たちが今朝の出勤時のさえずり状態を確認し合っている。teepeeは用足しにアチコチ小用。魚菜の云うとおり霜でもないがかなり冷え込んでいたのであろう。地面やタープ、ロシナンテはシットリ水滴で覆われている。              

まずはイット缶ストーブに火を足した。すでに朝飯の準備のだが、その前に今の風光Lをデジカメで幾枚も幾枚も撮る。sonetaもmac3も起き出し、薄明の台地に溶け込んでいる。いよいよ魔性の渓谷である。我がベースキャンプを何台もクルマが通り過ぎてゆく。我々より先に入らなければいいがと気にはなる。それは朝のあわただしさに拍車を掛ける。糧食担当としては速攻で朝メシにとりかかかかる。飯盒なんぞでメシ炊きが定番だが、昨日各自調達した食料をベースに残っていた山菜鍋、コレにsoneta持参のキノコを入れてパクツク。べーこんがあったので、メニュー変更による余った卵とで、山菜オムレッツにトライアルした・・・が、卵の量と焚き火の熱カロリーの不足で山菜スクランブルエッグになるが、モクモク寡黙に皆Mは食べる。先行きの車の行方が皆、気になるのだろう。手際よく後片付けして、程近いクルマ止めゲートには6時半前に降り立っている。

さてここから歩いて10分ほど・・・期待は時間を短縮させる。結果下界の3倍くらいかかってしまった。ガードロープを跨ぎカラマツ・シラカバの森の中を降りる。分厚い腐葉土の上を滑らないように下る。すぐに目指す沢に降り立つ。魔性の渓谷「一風の滝」の上部である。オレとteepeeは先頭になって沢に入る。芽吹く前の沢は比較的見通しもよく、後ろについてくる彼らNは周りを愛でながらこの沢を下っている。魔性の山菜もチラホラ。

昨日車中でsonetaは何度も虚弱体質と語っていたのだが・・・そのsonetaOを見ると一番難儀で危険なルートを選んでいる。高度恐怖症を自認してはばからないmac3Pさえも、いともたやすく残雪が下で待ち構える急斜面を駆け上っている。そう、これがこの谷を魔性と呼ぶ所以のヒトツかも知れない。魚菜は淡々とマイペースで沢を下る。助手は首にタオルを巻き、後姿はどこかのオバハンに見間違うかもしれないが、ヒト社会では輝かんばかりの身なりだと思う。

シラネアオイQが未開花と思っていたが、咲きはじめが幾輪もある。リュウキンカの不釣合いな黄色が流れに映えている。ショウジョウバカマ、エンレイソウR、イワナシその他の知らない花や木々が静かに迎えてくれている。雪解け水で増水気味だが、我等は魔性の山菜を摘みながら「一風の滝」へと下る。やはり先客グループが居た。アングラーである。9年ほど前にこの滝※2を発見して以来、一年に何度も尋ねてきてはいるが滅多にヒトと会わないのだが。斜面の上で彼らの釣り具合を眺めるが「釣れんだろう」と口に出してみる。しかしどこから入渓したかが気になる。本来いつものルートが開通していれば、遡行してココへたどり着くのだが今回は逆である。この沢の遡上入り口のあたりの沢床を魚菜にも体験させたかったが、いずれにしても腰を痛めている彼Sにはキツイ話しである。

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午前6時半前に入渓してから、この沢の出会いまで行くには時間がなさ過ぎる。OK、タイムアップだ。お気に入りのソーセージをポケットから取り出し、ナイフでスライスしてギョウジャニンニクで巻いて皆に勧める。美味し!クレソンでもいいのだが、ソーセージの塩味と魔性の山菜のコラボレーション味※21と書いておこう。mac3は近くの崖下から流れ落ちる清水を皆に勧める。甘露甘露!体力をつけてまたこの魔性の谷を遡上する。最後の難関の藪の少ない急斜面を選んで登る体力を温存しておかなければなるまい。それに林道を歩かなければならない・・・なんとかコレを上りきる。帰路、遠い道のりであるが芽吹きの始まったカラマツやブナの森をそれぞれのパターンで歩き戻る。東海ターミネーターズは日ごろのフィットネスで早い早い。山は道草喰いながらが自然。ふとオレは歩いていてドコからともなくメンバー以外の視線を感じていた。あたりを見回し納得する。百目の木※22である。記念に一枚。ダレも気付かない。道草のしたものの特権であろう。ゲートに着き着替えを済まし、アスファルトに座り、残っている食物を皆で平らげる。さて次回はどこでオフ会か、そう北アルプスの山々がなだれ落ちる日本海である。再会を期し、東海軍団とここで分かれる。

オレとsonetaは帰路、日本三大薬湯といわれる越後松之山温泉※23に寄って身体をオーバーホールすることに決めてある。ルート117から西に20kmほど、天水越えを抜ける極めてスリリングな道路である。途中雑草のようにウドも風にたなびいてはいたが風光だけにする。有馬・草津ほどアカ抜けていない山の中の趣のある温泉地である。冬には雪が有に数mも積もる県内屈指の町、薬臭い温泉で特にオレは湯船で脚の筋肉を時間かけてマッサージする。湯上り後はタイガーバームオイルを塗りたくって、sonetaにも勧める。しばし時間があるため申し訳程度のフロントの前(?)のスペースでオレは電気イスのヒトとなる。100円をひじ置き辺りの投入口に入れると数分間通電し、昇天する。桟敷で横になっているsonetaを見ながらアイスを頬張り、通電状態を楽しんだ。都合300円を投入、最後の100円で昇天したらしい、浅い眠りに入った。sonetaに起こされた。「時間だよ!」

いつもの事ながら最後は端処理気味。最後までお目を通していただき幸甚です。難解な書き方で、これがもっとシンプルならば今頃文筆業などやっていたかもしれません。願わくば老境に達する頃、今一度これら拙文を読んで赤面したいものです。2003/06/23

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